|
|
||
| Back << 雇用機会均等法(#18) |
退職金(#19) 2004/8/4 |
>> Next 攻撃は最大の防御(#20) |
|
|
||
| 先日の台風が去ってから、ちょっとだけ夜は過ごしやすくなったような・・・気がするだけでしょうか? そんなところへ大きなニュース! 政府税制調査会はサラリーマンの退職金所得への課税を強化する方針を明らかにした−という記事が新聞に出ていましたね。 とうとう来たか! という感じです。とれるところ、とりやすいところからはどんどんとっていくんですよねぇ。 もっと他にするべきことがあるのではないかと思うのですけど。 それにしても2006年度の税制改革を目指すというのですから、そう、もうあと2年です。 優遇受けられなくなるのなら、いっそここで辞めてしまえ! という駆け込み退職が出たり、それを口説き文句にした肩たたきがあるのではないかと不謹慎なことを考えてしまいました。 というわけで、今回のテーマは退職金です。 (この記事は2004年に書いたものです) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ★ 退職金とはなにか? −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ところで、退職金とはなんなのでしょうか? はい、会社を辞めたときにもらえるまとまったお金ですね。 では、なぜそんな制度があるのでしょう? もともとは「女工哀史」の時代にあった「強制貯金」にあるとも言われています。 強制貯金とは、今の社内貯金に似ていますが、大きく違うのは会社が一方的に給与から天引きしてしまうこと。 しかも決められた期間働かないと引き出せない。 このようにしておくことで、きつい労働に耐えかねて逃げ出してしまうことを予防しようとしたのですね(ちなみに、本人の同意を得ていない強制貯金は現在、労働基準法で禁止されています)。 そんな時代が過ぎても退職金が残っている理由はやはりできるだけ長く勤務して欲しいと言うことなのでしょう。 なにより多くの退職金制度は「退職時給与に基づく算定基礎額×勤続年数にあわせて増加する係数×退職事由係数」によって退職金の金額が算定されますから。 一昔前までは退職時の給与が一番高いのが普通でしたから、もらえるであろう退職金は、定年に向けて加速度的に伸びていくわけです。 勤続年数にあわせた係数があるということはできるだけ長く勤めた方が有利ということを意味します。 また退職事由係数は、ほとんどの場合、定年退職あるいは会社都合による退職の場合を1.0とし、自己都合による退職だと勤続年数が短いほど係数が小さくなってもらえる金額が少なくなるようになっているはずです(なかには一定の年齢以上の定年前の自己都合退職は1.0より大きくしている「早期退職優遇型」もあるかもしれません)。 こうしたタイプは「給与の後払い」とも言われています。 給与の一部を取り置きしておいて(支給するはずの一部を天引きするという強制貯金とは違う意味です)、できるだけ長く勤務してもらった人にできるだけ多く支給しようと言うことですね。 今となっては考えづらいことですが、戦前から戦後の早い時期にかけての社員の定着率はあまり高くなかったと聞いています。 退職金制度は流動性の高い当時の社員に対して、できるだけ会社に落ち着いてもらうことで、社員の身に着いた仕事上の知識やコツ、ノウハウが社外に流出するのを防ぎ、教育投資効果を引き上げ、採用・募集に関わるコストを引き下げたいというねらいがあったのです。 また、バブル期の採用難のころ(本当に今から考えると嘘みたい)に退職金あるいは退職年金制度を導入したところは多かったと思います(特に割と新しい業種で、当時、採用難だったソフトウエアなど)。 しかし、この「退職時給与×勤続係数×退職事由係数」方式だと、実際にどのように貢献したかにかかわらず、退職時の給与が同じであれば退職金の金額も同じことになってしまいます。 それに勤続係数がある以上、どうしてもキャリア採用組(新卒採用ではなくて他社を経験して入社した人)には不利になってしまいます。 そこで、毎年の貢献度(たとえばその人の等級や役職位など)を「ポイント」にして、そのポイントを毎年貯めておいて、退職時にそのポイントに「ポイント単価」を乗じて退職金を計算するという「ポイント制退職金」というのも多く導入されています。 この方式だと早く等級が上がったり、高い役職に就いたりした人の方が退職金は高くなります。 キャリア採用組も在籍した期間分はきちんと反映されるわけですから最初に説明した方式よりも納得度合いが高いと言えるでしょう。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ★ 退職金を巡る環境 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ところで、これまで説明してきた退職金のイメージは前述の通り「給与の後払い」的な性格を持つものです。 払う方にしてみれば、毎月の給与として出ていくものではなく、退職したときに支払わねばなりません。 経営の安定性を考えるのであれば、退職金支払いに当てるために資金を確保しておくことが望ましいです。 もらう方にとっても「お金がないから出せない」といわれると困りますから、国は企業に対して退職金のための資金確保を奨励しました。 その一つに「退職給与引当金」があります。 全額というわけではないのですが、退職金に必要な資金の一定割合を社内に留保しておくならコストとして認めようと言うものです(簡単に言うとですけど‥‥)。 企業会計上は、単純に言うと支払ったものしかコストとして見てもらえないわけですから、退職金の準備にしておこうと利益の中から捻出した資金は、そのままでは課税されてしまいます。 退職給与引当金制度のおかげで一部は「退職金の準備ですから」ということで費用(コスト)として課税されないで、社内においておくことができるというメリットがあったわけです(置いておくといっても帳簿上の話であって、現実には運転資金などに使われることもあるわけですから、そういったメリットもあったかもしれませんね)。 ところが、企業会計の国際化が進む中で、この退職給与引当金が問題視されるようになってきました。 端的に言って、退職金制度は日本に特有の制度なんですね。 諸外国では「手切れ金」みたいな、解雇するための給付というのはあるのですが、日本のような給与後払い的なものはありません。 そうした国から見ると、社員の退職という予測の難しいものに左右される、しかも日本にしかない訳の分からない(と外国特にアメリカからは見える)退職給与引当金は、邪魔だという話になりました。 で、退職給与引当金に対する税制上の優遇措置は段階的に廃止されました。 企業にとっては、退職金を支払うための方法の一つが無くなってしまったわけです。 退職給与引当金以外の資金手当ての方法として採用されていたのが企業年金制度です。 これは生命保険会社など外部の金融機関と年金契約を結んで、退職時には年金(退職後一定期間毎年一定額ずつもらう)か一時金(退職時にがばっと全部もらっちゃう)を社員が選べるようにするものです。 会社は毎年、年金の掛け金を払っていきます。 退職給与引当金とは違って金融機関に預けますから、何かあったときの保全という意味で確実ですから、当時の労働省はこれを積極的に勧めました。 企業にとっても掛金は全て費用(コスト)として認識されますし、何より今と違って郵便局の定期貯金の5年ものだと8%くらいの利息が付いていた時代ですから、年金契約を結ぶと運用益が出るというメリットがありました。 ところが、低成長期になって、事情が変わりました。 そんな運用益は出ないわけです。 しかも一方で、年金というのは一時金よりも分割して渡す分、トータルでは額が大きくなるように設定してあるのが普通でしたから、予定した運用益が出ないと、掛金を増やさなくてはならなくなりました。 企業年金は長期に渡るものですから0.1%狂ってきてもかなりの額になります。 しかもここでまた外圧が加わります。 それまでは「また運用益が出るようになったらそれでカバーできるから今足りなくてもいいじゃん」くらいに思っていたのが、国際会計基準では「いや、ちゃんと毎年計算して辻褄を合わせてくれないと困る」と言い出したわけです。 これに合わせることになってしまったので過去の分も含めて将来の運用不足の見込みをバランスシートに載せなければならなくなりました。 すでに手当てしてある分を越えたものは「積み立て不足」ということになります。 これが「退職給付債務」です。 先に述べたようにちょっとした運用の狂いでも額はでかいです。 積み立て不足なんですから、どうにかしなければならないということになります。 投資家から見れば「そんな借金みたいなもんを背負ってんのか〜」ということになりますので、日本の企業は慌てて積み立て不足を解消するために特別に掛け金を追加で支払わざるを得ませんでした。 それでもこの低経済成長が続くとさらに積み立て不足が拡大してくることもあります。 どうにかならないか! ということで注目されたのが「確定拠出年金制度」です。 ちなみにそれまでの方式は「確定給付年金制度」。 名前の通り、今までは給付額(つまり年金として支払う額)をお約束していたわけですが(確定した)、確定拠出年金は拠出額(つまり掛金)を確定しているだけで、年金額は運用次第ですという制度です。 もうすでに長くなっているので、この話は別の機会にしましょうね。 というわけで、企業にとっては、退職金制度は目の上のたんこぶになりつつあります。 なぜなら、 1)冒頭に述べたように長期勤続を奨励するという機能があったがこれが最近はそれほど重要ではなくなった (極論を言えば、定年までいてもらわなくてもよくなった) 2)企業会計上、とても負担 だからです。 実際に、退職金制度を廃止している企業も出てきていますよね。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ★ 退職金の変化はキャリア開発にも変化をもたらす −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 今回の税制変更は、こうした実態もにらんでのことなんでしょうねぇ。 退職金課税は税額控除ではなくて所得控除ですから、この仕組みが無くなるとその年の所得は跳ね上がることになります。 これって、翌年の住民税にも影響するかもしれませんね。 1年間くらいぶらっとしていようか〜なんてことがしづらくなったりしないのでしょうか? 企業が退職金制度を廃止しない理由の一つに、実はこの退職金課税の優遇措置がありました。 せっかくそういう優遇措置があるんだから使おうという発想です。 これが無くなると退職金制度廃止に勢いがつきそうです。 30代で家を建てて、毎月、こつこつと返済するものの、退職金で一気に返済して、残金は老後の資金に‥‥といったようなシナリオがありませんでしたか? これも退職金制度が無くなったら使えなくなりますね。 考えようによっては、これはかなり無駄なことをしているんですよね。 仮にローンがあっても、そんなあとの方になって一括返済するよりは、毎月の返済額を増やして借入期間を短縮した方が総支払額は少ないです。 倒産という状況になった場合、給与や退職金などの労働債務は優先度合いが高いと言っても、本当にもらえるかどうかは分からないし。 ということは毎月の報酬でもらう方が、つまり「退職金前払い方式」の方がよいのかもしれませんね(ただし、採用面で力の弱い会社がするとデメリットもありそうですけど‥‥)。 また、こうなってくると老後の資金を本気で考えておかなければならなくなるんでしょうね。 このように、今回の税制改革が実施されるようなことになると、日本の労働環境、労働意識は大きく変わるかもしれませんね。 キャリア・カウンセリングに関わる方にとっても目の離せないテーマではないでしょうか。 |
||
|
|
||
このメールマガジンは、キャリアスケープ・コンサルティングが発行しました。 キャリアスケープ・コンサルティングのホームページは |
||
| 役割と処遇が一致してさえいれば、いつまでいてもらってもよいのです。 役割という視点から考える人事制度(HRD/HRM)については こちら |
||
|
|
||
| Back << 雇用機会均等法(#18) |
退職金(#19) 2004/8/4 |
>> Next 攻撃は最大の防御(#20) |
|
|
||